思う事

埼玉の作品展で椅子を2脚ご購入いただいたお客様に、「この椅子に合うテーブルも作ってくれ」と、オーダーメイドのご注文を頂いた。

後日、ちょっとデザインを変えたテーブルを2脚持ち、どちらか気に入った方を選んでもらおうと自宅に伺った。

約束の時間より早く着いてしまった。

奥様に「主人は近くの建築現場にいます」と言われ現場に向った。

車で2分程の所に、平屋の大豪邸を建設中の現場に到着。

なにわナンバーの車が停まっており、セールスマン風の人物と打ち合わせ中のご主人がいた。

「ちょうどよかった。この建物が完成したらここに椅子とテーブルを置く予定なんだ」

「ご自宅の新築中ですか?」

「いやいや、この建物は完成したら市に寄付するのですよ」

よく意味がわからなかった。

「ところでご主人、テーブルを2脚お持ちしました。どちらがよろしいでしょうか。こちらが**万円、こちらは**万円です」

「せっかく持ってきたのだから、2脚とも置いていきなさい」

えっ?

そうなんです。皆さんもうお気づきでしょう、この方、ドラマに出てくるような、とんでもない大金持ちだったのです。

失礼のないように色々質問してみる。と、

この建物は学童保育施設で、完成したら市に寄付する。
隣の敷地には既に寄贈済みの建物がある。
更に、風力発電施設も建設予定で、なにわナンバーの人物は風力発電の関係者だった。

寄贈済みの建物の前には、『地元篤志家による寄贈』という石碑があった。

建設中の建物の中も見せてもらった。

見たこともない太さの柱、特注で焼かせたというタイル、特注のガラス、竹や木材を使った壁や、天井。
風呂場も総檜、流しまでも木材を使用。新建材など一切使っていない。

これを造るのに、いったい1万円札を何メートル積み重ねれば出来るのか想像できない。

ご主人曰く「最近の子供は落ち着きがない、こういった自然素材で出来た建物で遊んでもらい、優しい心の子供に育ってもらいたい」との事、

よく大企業の社長が企業のあり方について語っている『地域貢献、社会貢献、次の世代の人間を育てる』を、本当に実行している。

こんな人が本当にいたのですね!

初めて出会いました。

しかも、「あなたの作品は、自然の形を生かしてとてもよい、こういった作品をこの建物に置きたかったのですよ」。

というお褒めの言葉。恥ずかしい、ついさっきまで売値をいくらにしようか悩んでいた自分が恥ずかしい。

こんな素晴らしい考えをお持ちの方には、お金をもらってはいけないのかも?
ひょっとしてこれは、神が私を試しているのか、ここでお金をもらわなければ、私は芸術家としてのパワーが付き、ランクが上がるのか、
そんな事を考えている事態、ダメなんだろうな。一生貧乏確定かなぁ。 

 

 

 

嬉しいですね、こういう人に作品を認めてもらい、買っていただく。最高の名誉ですよね。
この作品を作ったということで、私も少しは社会貢献、いい人間を育てることに協力できたのでしょうか?

いるのですね、立派な方って。何億の建物を2棟寄付し、更に数億かかる風力発電施設まで、
今まで、私の周りには、尊敬できる人、素敵な人生を送っているな、という人がいませんでした。
成り上がりで金持ちになった人は、自分が金持っているのを人に言いたくてしょうがないみたいだし、
少しでも長生きしようと、酒ヤメて、煙草ヤメて、塩分控えめ、長生きするためだけに生きているようなつまらない人間になっちゃうし、
子供は親の財産あてにして、親が早く死なないかと願っているし、いい年こいて親に車買ってもらったとか、結婚式の費用出してもらったとか、
よく恥ずかしくも無く人に言えるよ。

人の不幸は蜜の味。他人の幸福癪(しゃく)の種。

 

もどる